KOSPIのサーキットブレーカーは、指数が前日終値から8%以上下落した状態が1分続くと、現物市場全体の売買を20分間停止する制度です。2026年は半導体・AI関連株の変動が大きく、6月26日だけでなく、7月28日、7月29日、10月15日にも発動が報じられました。
ただし、発動は「韓国企業の業績が一斉に悪化した」「日本株も必ず同じだけ下がる」という意味ではありません。市場全体の注文を止めて判断時間を確保する仕組みです。本記事では、韓国取引所(KRX)の8%・15%・20%ルール、サイドカーとの違い、2026年の主な発動局面、日本株を見る際の確認順を同じ軸で整理します。
公式確認できた事実:KOSPIは3段階で取引を止める
韓国取引所の制度説明では、KOSPIが前日終値から8%、15%、20%以上下落した場合に3段階のサーキットブレーカーを設けています。いずれも基準を1分間継続することが条件です。
| 段階 | 主な発動基準 | 措置 | 追加条件 |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 前日終値比8%以上下落 | 20分間、全銘柄の取引停止 | 1分間継続 |
| 第2段階 | 前日終値比15%以上下落 | 20分間、全銘柄の取引停止 | 第1段階発動時からさらに1%以上下落し、1分間継続 |
| 第3段階 | 前日終値比20%以上下落 | その日の取引を終了 | 第2段階発動時からさらに1%以上下落し、1分間継続 |
第1・第2段階は、それぞれ1日1回に限られ、通常は取引終了40分前以降には発動しません。第3段階は取引を再開せず、その日の市場を終了します。したがって「サーキットブレーカー発動」という見出しだけでは、どの段階か、取引が再開したかを確認する必要があります。
2026年の発動は一度ではない
旧稿で扱った6月26日の発動は単発の例ではありませんでした。聯合ニュースの6月26日報道によると、KOSPIが前日比8%超下落し、12時10分ごろから20分間取引が停止されました。同報道では、この時点で2026年5回目の発動とされています。
その後も、7月28日はAI投資の収益性に対する懸念を背景に10.84%安で終了し、午前10時14分に取引停止。翌7月29日も一時8%を超えて下落し、12時31分から20分間停止されました。10月15日にはAI投資と米金利への懸念から再び8%超下落し、12時38分に発動しています。
| 日付 | 発動時刻 | 終値の前日比 | 主な市場材料 |
|---|---|---|---|
| 6月26日 | 12時10分ごろ | 記事公表時点では取引中 | 大型テクノロジー株の利益確定売り |
| 7月28日 | 10時14分 | 10.84%安 | AI投資の収益性への懸念、米国テック株安 |
| 7月29日 | 12時31分 | 5.98%安 | 前日の急落継続、半導体株売り |
| 10月15日 | 12時38分 | 7.57%安 | AI投資懸念、米インフレと金利上昇観測 |
7月29日と10月15日は、取引中に8%以上下落して発動条件を満たしたものの、終値の下落率は8%未満でした。これはサーキットブレーカーが「終値」で判断される制度ではないことを示します。発動の有無を見るときは、終値だけでなく場中安値と1分間の継続条件を確認する必要があります。
サイドカーとサーキットブレーカーの違い
韓国株の急落時には「サイドカー」も報じられますが、同じ制度ではありません。韓国取引所のプログラム売買制度では、KOSPI200先物が基準価格から5%以上変動し、その状態が1分続いた場合、プログラム売買の注文効力を5分間停止します。
| 比較項目 | サイドカー | サーキットブレーカー |
|---|---|---|
| 基準 | KOSPI200先物の5%以上変動など | KOSPIの8%・15%・20%下落 |
| 継続条件 | 1分間 | 1分間 |
| 停止時間 | 5分間 | 第1・第2段階は20分間 |
| 対象 | プログラム売買の注文効力 | 現物市場の全銘柄 |
| 目的 | 先物発のプログラム売買の急増を抑制 | 市場全体に判断時間を設ける |
10月15日は、朝に売りサイドカーが発動し、その後の下落拡大でサーキットブレーカーへ移りました。「5分停止」と「20分停止」が同じ日に報じられるのは、異なる条件・対象の制度が順番に作動したためです。
2026年に発動が増えた背景
2026年のKOSPIは、AI・半導体株の上昇局面と急落局面の両方で値動きが大きくなりました。聯合ニュースの7月7日報道によると、この時点ですでに2026年の市場全体のサーキットブレーカーは6回に達し、2025年以前の累計6回と同数になっていました。サイドカーは同年32回で、それまでの年間最多だった2008年の26回を上回ったとされています。
同報道が背景の一つとして挙げたのが、Samsung ElectronicsまたはSK hynixの日次値動きを増幅して追う単一銘柄レバレッジETFです。両社はKOSPIの時価総額に占める比重が大きいため、半導体株への売買集中が指数全体の変動を大きくしやすい構造があります。ただし、レバレッジETFだけを急落の原因と断定はできません。米国のAI関連株、金利、外国人投資家の売買、韓国ウォンなど複数要因を合わせて見る必要があります。
| 変動を大きくし得る要因 | 確認する指標 | 日本株との接点 |
|---|---|---|
| 半導体大型株への集中 | Samsung Electronics、SK hynix、KOSPI200 | 製造装置・材料・電子部品 |
| レバレッジ商品の売買 | ETF売買高、先物、サイドカー | 指数先物とリスク許容度 |
| 米国AI株・金利 | 米半導体指数、米国債利回り | 日韓の成長株に共通 |
| 外国人資金と為替 | 外国人売買、韓国ウォン | アジア株全体の資金フロー |
Econovaが取り上げた6月26日、7月28日、7月29日、10月15日の4局面は、いずれも半導体・AI関連株の売りが主要材料として報じられています。これは全発動日の完全な統計ではありませんが、2026年のKOSPI急落を日本株で読む際、半導体サイクルとAI投資の収益性が共通確認項目になることを示しています。
発動回数が多いこと自体は、将来の下落回数を予測する材料にはなりません。制度が作動した回数と、企業利益の悪化回数は別物です。発動日ごとに原因、資金フロー、決算への影響を分けて記録する必要があります。
日本市場の制度とは対象が違う
韓国のKOSPIサーキットブレーカーは、現物市場の全銘柄を一斉に止めます。一方、日本取引所グループの制度では、日経225先物やTOPIX先物などの中心限月が制限値幅に達した場合、同じ原資産の先物・オプション取引を一時中断し、制限値幅を段階的に拡大します。
| 項目 | 韓国KOSPI | 日本の代表的な指数先物 |
|---|---|---|
| 主な基準 | 現物指数の下落率 | 先物中心限月が制限値幅に到達 |
| 主な停止対象 | 現物市場の全銘柄 | 同一原資産の先物・オプション |
| 停止後 | 第1・第2段階は20分後に再開 | 制限値幅を段階的に拡大 |
| 注意点 | 終値が8%未満でも場中発動あり | 日本の現物株全体を同じ条件で止める制度ではない |
この違いから、韓国で発動したから日本でも同じ基準で市場全体が止まる、とはいえません。制度を比較するときは「現物か先物か」「市場全体か対象商品か」を分ける必要があります。
Econova独自整理:日本株への波及を3段階で確認する
KOSPIの急落が日本株へ影響するかは、次の3段階で確認すると誤解を減らせます。
- 共通材料か:米国の半導体株、AI投資、金利、地政学など、韓国以外にも作用する材料かを確認します。
- 資金フローか:外国人投資家の売り、先物、為替の動きがアジア全体に広がっているかを見ます。
- 企業業績か:日本企業の受注、在庫、価格、設備投資見通しに実際の変化が出たかを決算資料で確認します。
第1・第2段階だけなら、個別企業の業績悪化ではなくリスク回避による一時的な値動きの可能性があります。第3段階まで確認できた場合に、半導体製造装置、材料、電子部品などの業績前提を見直す方が、指数の下落だけで判断するより合理的です。
韓国市場はSamsung ElectronicsやSK hynixなどメモリー半導体大手の影響が大きく、日本では製造装置・材料・電子部品が同じ投資サイクルの影響を受けます。関連企業の供給条件は、AIサーバー用コンデンサーの需給、世界需要の確認には世界半導体売上とAI・メモリーの伸びも参考になります。
急落時に確認するチェックリスト
- 発動したのはサイドカーか、サーキットブレーカーか
- KOSPIだけか、KOSDAQや他のアジア市場にも広がっているか
- 場中安値と終値を混同していないか
- 外国人の売買、韓国ウォン、米半導体指数も同方向か
- 日本企業の決算や受注見通しに変化があるか
サーキットブレーカーは急落を止める装置ではなく、判断時間を設ける装置です。再開後に下落が続く場合も、反発する場合もあります。短期の値動きを予測する材料ではなく、市場のストレスが通常より大きいことを示す制度として読むのが適切です。
よくある質問
Q1. KOSPIは何%下がるとサーキットブレーカーが発動しますか?
第1段階は前日終値比8%以上の下落が1分続くと発動します。第2段階は15%、第3段階は20%が基準ですが、前段階からさらに1%以上下落する追加条件があります。
Q2. 取引は何分止まりますか?
第1・第2段階は20分間です。第3段階はその日の取引を終了します。
Q3. サイドカーとの違いは何ですか?
サイドカーは先物の急変を基準にプログラム売買の注文効力を5分止める制度です。サーキットブレーカーは現物市場全体の取引を20分止めます。
Q4. 終値が8%安でなくても発動しますか?
発動します。場中に8%以上下落した状態が1分続けば条件を満たすため、その後に戻して終値が8%未満の下落になる場合があります。
Q5. KOSPIで発動すると日本株も必ず下がりますか?
必ずではありません。米国テック株安や金利上昇など共通材料がある場合は波及しやすい一方、韓国固有の需給要因なら影響が限定される可能性があります。
※本記事は2026年11月1日時点の公式制度と公表情報に基づく整理です。特定の株式・指数・金融商品の売買を推奨するものではありません。


