東大発スタートアップのOptQCが進める光方式の量子コンピュータが注目されています。量子コンピュータというと、超電導方式やイオントラップ方式を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、OptQCが軸にしているのは「光」を使う方式です。光ファイバーや光通信技術との相性、大規模化のしやすさ、エネルギー効率の面で独自の強みがあります。
ただし、量子コンピュータは「すぐに現在のコンピュータを置き換える魔法の機械」ではありません。現段階では、方式ごとに得意分野、装置構成、誤り訂正、実用化までの距離が異なります。OptQCの動きを見るうえでは、国内で実機開発が進んでいることの意味と、光方式ならではの課題を分けて整理する必要があります。
OptQCとはどんな会社か
OptQCは、東京大学古澤研究室の光量子技術を背景に、光量子コンピュータの社会実装と実用化を目指す企業です。公式サイトでは、光量子コンピュータの特徴として、スケーラビリティ、高速処理、エネルギー効率、光通信分野との融合を挙げています。
同社は2025年5月、産業技術総合研究所のG-QuATに設置する初の商用型光量子コンピュータの構築を開始したと発表しました。公式発表では、2026年4月の商用稼働開始を目標としていたことが示されています。今回の話題は、この計画が研究室の概念実証から、利用を想定した実機段階へ近づいている点にあります。
また、NTTとOptQCは2025年11月、実用的な光量子コンピュータの実現に向けた連携協定を締結しています。NTTの発表では、光通信技術、光増幅技術、光多重化技術などを光量子コンピュータの開発に応用し、スケーラビリティと信頼性を高める狙いが説明されています。
光方式の量子コンピュータは何が違うのか
量子コンピュータは、量子状態を使って計算を進める技術です。超電導方式では極低温で動く回路を使い、イオントラップ方式では原子やイオンを制御します。これに対し、光方式では光の量子的な性質を使います。光は高速に伝わり、既存の光通信技術と接続しやすいため、大規模化やネットワーク化の面で期待されています。
理化学研究所の解説では、光方式の一つとして、光の波の振幅値という連続的な値を使うアナログ型の光量子コンピュータが紹介されています。現実のデータや物理現象には連続量で表されるものが多く、アナログ的な情報を扱う計算では、デジタル変換の手間を減らせる可能性があります。
このため、光方式は最適化問題、材料探索、機械学習、複雑なシミュレーションなどとの相性が期待されます。ただし、期待される用途があることと、すでに実用的な優位性が幅広く証明されたことは別です。実機の規模、計算精度、ソフトウェア環境、利用者が扱える問題設定がそろって初めて、産業利用に近づきます。
国内で実機が動くことの意味
量子コンピュータ開発では、論文上の成果だけでなく、実機を継続的に動かし、ユーザーや研究者が触れられる環境を作ることが重要です。装置を実際に動かすと、光源、測定器、制御系、冷却や安定化、ソフトウェア、利用者インターフェースなど、研究論文だけでは見えにくい課題が出ます。
OptQCの商用型実機がG-QuATに設置される計画は、この「使える環境づくり」に関わる意味があります。産総研のG-QuATは、量子・AI融合技術の産業化に向けた拠点として位置づけられています。スタートアップ単独ではなく、公的研究機関、大学、通信企業とつながりながら開発を進める構図は、日本の量子技術を産業基盤に近づけるうえで重要です。
- 研究成果を実機として検証しやすくなる
- 利用企業が量子計算の使い方を試しやすくなる
- 光源、測定、制御、ソフトウェアの周辺産業が育ちやすくなる
- 大学発技術を国内で社会実装するルートが見えやすくなる
実用化へ残る課題
光方式の強みは大規模化や光通信との相性ですが、実用化には信頼性と誤り訂正が欠かせません。量子状態は外部環境や装置ノイズの影響を受けやすく、計算結果を安定して取り出すには高品質な量子光源、精密な測定、複雑な制御が必要になります。
東京大学の2026年3月の発表では、光量子コンピュータの根源となるスクイーズド光について、導波路型光デバイスで高品質な量子ノイズ圧縮に成功したことが説明されています。これは、装置の小型化や高速化、信頼性向上につながる基盤技術です。実用化は一つの装置だけで決まるのではなく、こうした部品・光源・測定・制御の積み上げで進みます。
また、量子コンピュータを使うには、ハードウェアだけでなくソフトウェアも必要です。どの問題を量子計算に載せるのか、従来計算とどう組み合わせるのか、結果をどう検証するのか。企業利用では、この部分が導入の壁になります。
企業が注目すべきポイント
OptQCのニュースは、単に「新しい量子コンピュータが動いた」という話ではありません。日本発の深い研究成果を、商用機、拠点、企業連携、ソフトウェア環境へつなげる動きとして見るべきです。特にAI利用が広がり、計算資源と電力消費が課題になるなかで、光方式のエネルギー効率への期待は産業面でも意味を持ちます。
一方で、現時点で企業がすぐに業務システムを量子計算へ移す段階ではありません。まず見るべきなのは、実機の利用範囲、公開されるベンチマーク、利用できる開発環境、研究機関や企業との共同検証事例です。量子コンピュータの価値は、方式の名前ではなく、具体的な問題に対して従来計算より意味のある結果を出せるかで判断されます。
OptQCの取り組みは、日本の量子技術が「研究」から「使える基盤」へ進むための重要な一歩です。今後は、商用稼働の実績、利用企業の事例、エラー耐性技術、ソフトウェアの成熟度が焦点になります。光方式の量子コンピュータは、まだ黎明期にありますが、通信技術と計算技術が重なる日本らしい勝ち筋として追う価値があります。
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主な参照情報
- OptQC「初の商用型光量子コンピュータの構築を開始」
- OptQC 企業情報
- NTT・OptQC「光量子コンピュータ実現に向けた連携協定」
- 理化学研究所「いよいよ現実化した光量子コンピュータ」
- 東京大学「導波路型光デバイスによる世界最高品質のスクイーズド光生成に成功」
本記事は、日経RSSで確認した話題をもとに、公開情報・公式情報から独自に整理した解説です。特定企業の株式売買や投資判断を勧めるものではありません。


