若者の金融資産格差はなぜ広がる?20代のNISA利用と平均・中央値の読み方

若年層の金融資産格差、平均と中央値、NISA利用率の違いを示す図解 政治・経済
資産形成の広がりは、口座数だけでなく平均・中央値、実際の利用者数、家計余力を分けて確認する必要があります。

20代でもNISA口座の保有が広がる一方、若年層の金融資産は「持つ人」と「持たない人」の差が目立っています。投資参加者が増えれば平均資産額は押し上がりますが、中央値が同じように伸びるとは限りません。制度の普及と資産格差は、同時に進み得るテーマです。

この記事では、2026年9月9日の報道をテーマの入口に、金融庁、J-FLEC、資産運用業協会、RIETIの公開資料から、若者の金融資産格差、20代のNISA利用、平均と中央値の違いを整理します。結論は、NISA口座数だけでは裾野の広がりを判断できず、実際の投資人数、積立額、生活防衛資金、所得の余力を合わせて見る必要がある、ということです。

確認できる事実:NISAは広がったが、資産形成の成果は均一ではない

金融庁は2026年1月時点の説明資料で、NISA口座数は約2,700万口座となり、18歳以上の国民のおよそ4人に1人が口座を保有する状況だと説明しています。若年層を含めて制度の利用が進んでいることは、公式資料からも確認できます。

一方、9月9日の日経報道は、20代のNISA利用もなお約4人に1人にとどまり、若年層の金融資産格差を示す係数が拡大していると伝えました。ここで重要なのは「20代の4人に1人が投資で十分な資産を作れている」という意味ではないことです。口座を開いても買い付けをしていない場合や、少額だけ利用する場合があり、口座数と運用残高は別の指標です。

資産運用業協会の2026年3月レポートでは、家計金融資産の総額は2014年の1,694兆円から2024年の2,230兆円へ増え、2025年末には2,351兆円とされています。その一方で、2014年から2024年にかけて年代別金融資産の中央値は後退傾向にあり、平均値と中央値の比は特に若年層で広がっていると指摘しています。

つまり、日本全体の金融資産総額が増えても、典型的な家計の保有額が同じペースで増えているとは限りません。資産価格の上昇や一部世帯の保有増が平均値を押し上げる一方、中央値には広い層の実態が表れやすいからです。

金融資産の「平均」と「中央値」は何が違うのか

平均値は、全世帯の金融資産を合計して世帯数で割った数字です。少数の高資産世帯が大きな資産を持つと、平均値は上がりやすくなります。中央値は、金融資産額が少ない順に世帯を並べたときに中央に来る世帯の値です。資産形成の「一般的な位置」を知るには、平均だけでなく中央値も欠かせません。

たとえば5人の金融資産が0万円、20万円、50万円、100万円、1,000万円なら、平均は234万円ですが中央値は50万円です。平均だけを見ると多くの人が200万円前後を持つように見えますが、実際には5人中4人が平均未満です。若年層の資産格差を読むときに平均・中央値の両方が必要なのは、このためです。

格差係数として使われるジニ係数は、0に近いほど均等、1に近いほど偏りが大きいことを示す指標です。ただし、調査対象、金融資産の定義、負債を差し引くか、単身世帯と二人以上世帯をどう扱うかで値は変わります。異なる調査の数値をそのまま横並びにせず、同じ定義の時系列で見ることが大切です。

若年層で資産差が広がりやすい4つの理由

1. 投資に回せる家計余力が違う

同じ年齢でも、手取り収入、家賃、奨学金返済、扶養負担、雇用の安定度によって毎月の余剰資金は違います。NISAは運用益を非課税にする制度であり、投資元本を給付する制度ではありません。先に投資へ回せるお金がある人ほど制度を使いやすい構造です。

物価上昇と賃金の関係は、econovaの物価・賃金・家計ハブと実質賃金と家計の確認点でも整理しています。名目賃金が増えても、生活費の伸びが上回れば資産形成に回せる余力は増えません。

2. 口座開設と継続投資の間に差がある

資産運用業協会の2026年3月資料では、非課税制度などを含む積立投資の延べ件数は2024年12月に約4,300万件へ達しました。しかし、これは一人が複数制度・複数口座で積み立てる場合も含む延べ件数です。同資料は、積立投資人口は新NISA開始後も全体では横ばいの可能性があると指摘しています。

制度の規模を測る「口座数」「契約件数」と、裾野を測る「実人数」、成果を測る「残高」「中央値」は役割が違います。どれか一つだけで、資産形成が広く進んだと判断するのは早計です。

3. 投資期間と運用商品の違いが累積する

同じ金額を積み立てても、始めた時期、運用期間、商品コスト、値動き、途中の売却によって結果は変わります。金融庁は資産形成の基本として長期・積立・分散を紹介していますが、元本割れの可能性がなくなるわけではありません。

NISAは非課税の「器」であり、損失を防ぐ制度ではありません。NISAで金ファンドを選ぶ前の確認点で触れたように、テーマ性の高い商品は値動き、為替、手数料、資産の偏りを確認する必要があります。

4. 金融情報へ接する機会にも差がある

資産運用業協会の資料では、投資信託保有率や金融教育経験者の割合は上昇していますが、2025年の金融教育経験者は35.1%で過半数には届いていません。金融知識の量だけでなく、信頼できる情報へアクセスできるか、相談相手がいるか、詐欺的な勧誘を見分けられるかも結果を左右します。

見出しだけでは分からないこと:NISAを使わないことが直ちに問題ではない

20代でNISAを使っていないからといって、必ず資産形成が遅れているとは限りません。まず生活防衛資金を確保している人、奨学金や高金利の債務を返している人、資格取得や転職のため自己投資を優先している人もいます。ライフプランによって合理的な優先順位は異なります。

逆に、NISAを使っていても、生活費を削り過ぎたり、短期の値上がりだけを狙ったり、特定商品へ集中したりすれば、家計の安定性は低下します。制度利用の有無を競うより、収支、緊急資金、投資期間、許容できる損失を先に確認する方が実務的です。

今回のテーマが示すのは「全員が同額を投資すべき」という話ではありません。投資可能な家計余力の差と、制度・教育へのアクセスの差を分けて考えなければ、資産形成支援が既に余力のある層へ偏る可能性があるという論点です。

政策評価でも、口座数を増やすことと、金融資産を持たない層を減らすことは別の目標です。非課税枠の拡大だけでなく、所得環境、家計管理、金融教育、相談機会まで含めて検証する必要があります。

20代がNISAを考える前に確認したい順番

  • 毎月の手取り、固定費、変動費を把握し、赤字を投資で埋めようとしていないか。
  • 急な失業、病気、引っ越しに備える現金を確保できているか。
  • カードのリボ払いや高金利の借入など、優先して返済すべき債務がないか。
  • 数年以内に使う教育費、住宅費、結婚・転居費を値動きのある商品へ入れていないか。
  • 商品の値動き、投資対象、信託報酬、為替リスクを理解しているか。
  • SNS上の利益保証、限定案件、著名人を装う勧誘ではなく、金融庁やJ-FLECの情報を確認しているか。

投資額は「周囲がいくら積み立てているか」ではなく、家計ごとの余剰資金で決めるものです。少額でも継続できる設計と、投資を一時停止しても生活が崩れない余裕が重要です。

まだ不確かな点と次に確認したい指標

若年層の資産格差が今後さらに広がるかは、株価だけでは決まりません。賃金、雇用、家賃、奨学金、物価、税・社会保険料、相続、NISAの継続率が影響します。また、J-FLECの家計調査はインターネットモニター調査であり、正確な総額ではなく傾向として扱う注意が必要です。

  • 金融庁が公表する年代別NISA口座数、買付額、継続利用の変化。
  • J-FLEC調査の年代別金融資産の平均・中央値・非保有率。
  • 積立投資の延べ件数ではなく、実際に継続している人数。
  • 20代の実質賃金、可処分所得、家賃や教育関連負担の推移。
  • 相場上昇局面と下落局面で、積立停止・売却行動がどう変わるか。

Q&A:若者の金融資産格差とNISA

20代の何人に1人がNISAを利用していますか?

2026年9月9日の日経報道では、20代のNISA利用はなお約4人に1人とされています。ただし、口座保有と実際の買い付け・継続積立は同じではありません。金融庁の年代別口座数と買付額を分けて確認する必要があります。

金融資産の平均より中央値を見るべきですか?

両方を見るべきです。平均は金融資産の総規模を把握するのに向き、中央値は中央に位置する世帯の実態を捉えやすい指標です。平均だけが伸びる場合、一部の高資産層が数字を押し上げている可能性があります。

NISAを始めれば資産格差は縮まりますか?

NISAは運用益を非課税にする制度であり、それだけで格差が縮まるとは限りません。投資元本に回せる所得、継続期間、商品、相場変動によって結果が異なります。生活資金を確保したうえで、自分の家計に合うかを判断する必要があります。

20代は投資を最優先すべきですか?

一律には言えません。生活防衛資金、高金利債務、近い将来の支出、自己投資などを先に置く方が合理的な場合があります。本記事は一般的な制度・家計情報であり、特定商品の購入や投資額を勧めるものではありません。

主な参照情報

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本記事は公開資料と報道をもとにした一般的な情報整理です。NISAには元本割れの可能性があり、家計状況や目的によって適切な選択は異なります。実際の投資判断は最新の公式資料、商品の交付目論見書、必要に応じて中立的な専門家の確認を前提にしてください。

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